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執筆者の写真Dr. Goaty

【Dr. Goatyコラム~Vol.2】スポーツサイエンスの最新エビデンス

更新日:2023年10月23日


本コラムでは、ニューロサイエンティストで臨床医であるDr.Goatyがスポーツサイエンスの最新エビデンスシリーズをスタート致します。近年、スポーツビジネスにおけるデータサイエンスの重要性はますます高まってきております。スポーツビジネス業界における、最新機器を用いたデータ活用における最新エビデンスを、毎回、神経科学的な切り口を含めて紹介していきます。

こんにちは、はじめまして。Dr. Goatyです。私は臨床医として働く傍ら、神経科学を専門とした研究者である現役の医学研究者です。


第2回目の今回は、バレーボールにおけるデータ解析の重要性について、最新デバイスの活用状況を含めて科学的な切り口で見ていきたいと思います。


現在、様々なスポーツ競技において、データ解析はますます重要な要素になってきています。そして、バレーボールにおいても、パフォーマンスを分析・向上させるためにデータを活用することへの関心が高まってきており、より高度な技術やデータ収集方法が活用されている競技の一つになってきてます。


バレーボールにおけるデータ分析の活用状況としては、プロレベル、特に世界のトッププロリーグで最も浸透して来ております。さらに、大学レベルにおいても、手頃で簡便なトラッキング技術やデータ分析ソフトウェアの開発などが進んできており、アマチュアチームがデータ分析をより利用しやすくなってきてます。そして、最近では一部の大学チームでは積極的に最新デバイスを用いた取り組みが活発化してきております。バレーボールでデータ分析が活用されている分野の1つに、コート上の選手の動きや動作のトラッキングを分析することが重要視されております。これを通して、プレーヤーの位置・スピード・ボールの動きや軌道のトラッキングが行われ、このデータは、選手個人のパフォーマンスやチームのパフォーマンスを評価し、改善すべき点を特定するために分析されております。


バレーボールにおけるトレーニングの強度が実際の試合におけるコート上のパフォーマンスに大きな影響を及ぼす可能性があるため、どのように選手たちを管理すべきかが検討されております。その点から考えて、コートにおける選手たちのジャンプの回数や高さを定量化することの重要性が言われており、その点で、各種デバイスは非常に有効なツールとして位置づけられてきております。


弊社の業務提携を行っているKinexon社の ローカルポジショニングシステム(LPS)を用いた研究の一つとして、バレーボールのトップ選手の解析を紹介させていただきたいと思います。Akyildizら(2022)らは、Women's Club World Championshipのトップ選手14人を対象として行われ、2020-2021シーズンの試合前1週間でのトレーニングデータと試合中のデータの解析を行いました。LPS を用いて、それぞれのポジションにおける選手のジャンプ・コート上での加速・減速といった動きの詳細なデータ収集を行いました。その結果、試合5日前から試合当日へ向けて、パフォーマンス指標の強度の詳細について、トレーニング強度の変化を捉えることが可能でした。さらには、バレーボールでは、コート上でのポジション別によって、それぞれの選手の役割が大きく異なるため、各ポジション別の違いを理解する必要があります。今回の結果では、ポジションごとで具体的にどのような負荷に差があるのかを明確にすることも可能でした。


バレーボール競技において、コーチは、正確で具体的なトレーニングプログラムを設計することが非常に重要です。このような、トレーニングセッションや試合中のアスリートをモニターする最新技術を使用することで、試合当日へ向けて、トレーニングの日と試合当日の異なるプレーポジションを比較した上での、パフォーマンスの強度を可視化することが容易となりました。この結果は、コーチ陣がトレーニング強度をコントロールすることの重要性を再認識させるものだと思います。選手の個々の特性、試合中のそれぞれのタスクを考慮しながら、トレーニングと試合の当日のバランスを取り込むことは、パフォーマンスを向上させるだけでなく、過負荷によって生じる怪我を避ける意味で、非常に有効になってきます。


バレーボールにおいても、今後、国際的にはトップリーグだけでなくアマチュアレベルへも広がりを見せてきており、LPSのような最新技術を用いたデータ解析が、選手たちのトレーニングの日常の一部となることが考えられます。そこから派生してくるデータ分析を通して、コーチングの戦略やゲームプランニングの改善につながり、チームの長所と短所を評価し、チームの強みを最大限に生かせるような戦略開発に利用される日も近いでしょう。


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いかがでしたでしょうか?

さて、今後も弊社のスポーツビジネスにおけるサービスが、チームやアスリートがより良い判断を下し、パフォーマンスを向上させるのに役立つ貴重な洞察や情報を提供できるように、最新のエビデンスをお届けしていきたいと思います!

参考文献

Akyildiz, Z., de Oliveira Castro, H., Çene, E., Laporta, L., Parim, C., Altundag, E., Akarçeşme, C., Guidetti, G., Miale, G., Silva, A. F., Nobari, H., & Clemente, F. M. (2022). Within-week differences in external training load demands in elite volleyball players. BMC sports science, medicine & rehabilitation, 14(1), 188. https://doi.org/10.1186/s13102-022-00568-1









Dr. Goaty(ペンネーム)

プロフィール:臨床医(専門:内科全般、神経内科)・研究者(神経科学)として、日米の研究機関で研鑽。十年以上にわたり神経領域を中心に研究・臨床に従事して、英語の査読付き原著論文および日本語の論文執筆を多数経験。資格:日本医師免許(日本内科学会・神経学会専門医)、ECFMG certificate。

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